今更ながら坂の上の雲を呼んだ、全6巻あり、総ページ数は3000ページ弱だと思われる。
私は、ドラマも見ていなければ、内容も実はあまり知らなかった。(なんともお恥ずかしい話である)
このお話はざっくり言うと日清戦争と日露戦争のお話である。
昔、学校で社会の授業で聞いた事があるはずだ、明治時代に日本は日清戦争と日露戦争に勝った、と。
教科書ではそれこそ一瞬で通り過ぎていく内容であるが、これを3000ページもの大作に仕上げられているわけである。
あとがきで書かれていたが、この作品は事前準備に5年、執筆に4年以上がかかったということで、約10年間にわたって書き上げられた作品ということになる。
10年もの膨大な歳月をかけられて作られた作品を私はどのようにして読んだかというと、図書館でタダで借りて読んだという事である。
なんともお得な世の中である。
それにしても10年である、10年間かけて一つの作品を作り上げたことがあるだろうか、私が今書いているブログなどは、ただの思い付きで書いている。
それに比べれば司馬遼太郎先生の膨大な文献の調査からなにから、作品の端々から途方もない調査の結果が感じられる。
これだけこだわって作られたものならば、そりゃ面白いわ、ということなのである。
本の内容としては、日清戦争はサクッと流れ、基本的には日露戦争の話が多く描かれている。
教科書では一瞬で終わる日本がロシアに勝った、という事実であるが、その要因としては単純な事ではない。
日本で話題になるのは(私の浅い知識でいうと)太平洋戦争のお話が多く、精神的なお話が多いように感じる(私のただの主観である)。
しかし、坂の上の雲では日露戦争の勝利は完璧な、戦略・準備によるところが大きいと描かれている。
明治維新を経て、膨大な軍事費を投入し、いかに海軍戦力をどのような形で構築していくのか?ということであったり、軍艦における戦術であったりを、過去の戦争の歴史から学び、理論的に戦法を構築したことによる事が勝利に大きく貢献したという事が終始描かれる。
もちろん、ロシアの侵略に対する日本人としての国の防衛戦という意味において、日本人の心意気や志といったものも勝利に大きく貢献したようではあるが、それ以上に物質的な軍事力・作戦・戦術という事に重きが置かれていたということだ。
このような事は社会の教科書には書いていない、日露戦争に勝利した、と書かれただけで、当時の私は、なんと日本は強いのだ、という感想を持ったが、その勝利には緻密な計画や天才たちによる努力の結晶が大きく影響していたわけである。
歴史というのは真実を映し出す、勝つということは、勝つべくして勝つということであって、勝つための準備をしたところにだけ勝利が舞い込む。
現代でもこの原理はまったく同じなのだろう。
勝つため・成功する為の準備や努力、行動を起こさない者には勝利や成功は絶対にやってこない。
私は学校でこのことを学んだのだろうか、間違いなく社会の教科書、日清戦争と日露戦争、そして太平洋戦争の項からは学んだ覚えはない。
しかし、坂の上の雲を読むだけで、この事実に気付けるのだ。
そういう意味では学校教育というのは不思議なものだ、そして、学校の先生というのはこの事実に気付いているのだろうか、気づいていたとしてもカリキュラムになければこの事実を伝える事はないのだろうか。
そして、親は子供にこの事実を伝える事があるのだろうか、私の親は確かに少し言っていたような気もする、しかし、私にまったく染み渡っていない、あまりしつこくは言わなかったのだろう。
または、この世の真実に気づいていなかったのかもしれない。
膨大なページ数を誇る坂の上の雲、読んで損は絶対に無いと思う、文庫本であれば700円程度、BookOffなどにも売っているだろう、もっと節約したい人は図書館に必ず置いてある。
ぜひ読んでみてほしい、ドラマは見た事がないのでわからないが、書籍の細かいディテールが表現されているとは思えないので、できれば書籍で読む事を推奨したい。
今の日本がなぜあるのか、なぜ太平洋戦争があのような結果になったのか、といったことにまで思いを馳せられる名著であります。(なんてことはみんな知ってるか・・・)
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